モウリーニョに学ぶリーダーとして大切なこと

スポーツで名将と呼ばれる人の言葉からは、多くのことを学ぶことができます。

監督の最も重要な仕事は、自らの方針や戦術を選手に理解・浸透させ、チーム全体でいかに具現化し結果を出すかではないでしょうか。

しかし、プロスポーツ、中でも強豪と呼ばれるチームに属する能力の高い選手は、当然、そのスポーツに対してそれぞれの見識を持っています。納得できる方針、勝てる(と思える)戦術を提示できなければ、要求通りのプレイなどしてくれないかもしれません。

プロのアスリートは勤め人ではなく、シビアな世界に生きる個人事業主ですから当然ですね。

その意味で、プロ選手としてのキャリアが無いにも関わらず、数々のクラブで多くのタイトルを獲り、先期までスペインの強豪レアル・マドリーの監督を務めていたジョゼ・モウリョーニョの手腕はすごい。(残念ながらレアル・マドリーでは期待されていたほどの成績を収めることはできませんでしたが…それでも凄いけど)

少し前に、WOWOWで放映されたノンフィクションW 「王者の資質」レアル・マドリード監督ジョゼ・モウリーニョという番組は、多くの関係者のコメントを引用しつつ、モウリーニョ自身の経歴を読み解くという興味深い内容でした。

先日、自分のEvernoteを整理していた際に、その番組をメモしたテキストが発掘されたのですが、サッカーに閉じた内容ではなく、チームビルディングやリーダー論として役立ちそうに思えたので、ここでシェアします。

目に見える成果を上げて結束を強める

勝つことで人々は結束する。
> チームが勝ったり快挙を成し遂げたり大きな目標を達成したとき、大きな共感が産まれ監督と選手の距離も近くなる。これが大きな力になる。
> 勝利がチームの問題を解決させていくんだ。

モウリーニョは目に見える成果を早く出すことに注力し、それによって、自分への信頼を獲得することで求心力を高めていきます。

だからこそ結果を出すことにこだわる。アンチフットボールと揶揄されたとしても、それが、結果を出すためにベストと判断するなら躊躇なくやり切る。それは「目に見える成果」を「少しでも早く」上げることに注力しているからなんでしょうね。

「常識」を疑い新しいコンセプトを打ち立てる

モウリーニョの練習時間は試合と同じ90分。走り込みなどのフィジカルトレーニングは一切ないそうです。

仮にあなたがピアノをうまく弾きたいなら練習でピアノの周りを走るか?
そんなことはないはずだ。ピアノを弾くだろう?
サッカーも同じだ。グラウンドの周りを走って、いいサッカーはできない。

一般的な練習メニューをこなすのではなく、なぜそんな練習をするのか、その結果、どのような成果が得られるのかを考え抜いて選手へ伝える。

ポルトガル代表のポスティガはモウリーニョの練習に関してこんなコメントをしています。

「次の試合はこうすれば勝てる」そんな自信が持てる練習なんだ。
彼はいつも相手の弱点も長所も試合展開まで完全に予測していた。
その上でどうプレイすれば相手を上回れるかを練習する。
つまり試合の前から僕たちは有利になっているんだ。

さらにプロ経験が無いモウリーニョは、こんなことを言っています。

私は優れた選手たちを、さらに上手くすることはできない。
私はロナウドにキックを教えることはできない。
カシージャスにセービングも教えられない。
だがチームで戦うことを教えることはできる。
全てはそのための練習だ。

レベルの高い選手を揃えているチームでなければ、同じようにはいかないかもしれませんが、監督の仕事は選手個々のスキルを高めることではなく、選手のストロングポイントを最大限に引き出して融和させ、チーム全体の力を選手の能力値の総和以上に高めること。

この視点はプロ選手としてのキャリアが無いモウリーニョならではなのかもしれません。

外部の雑音から守る

レアル・マドリーのマルセロはこんなコメントをしています。

彼はすごくフレンドリーな人だよ。
そして僕たちを守ってくれるんだ。
命がけでまもってくれる。
大きなクラブだから選手はよくマスコミの批判の的になるけど
彼はその盾になってチーム全員守っているんだ。
僕たちのために彼はやってくれる。
だから僕たちも彼のために頑張る。
彼の望みをピッチの上で叶えて勝たせてあげたいと思うんだ

マスコミへの対応が横柄かつ傲慢に見えるのは、外部からの雑音が全て自分に向くように、あえてそのように振舞っているということなんですね。

外部の人間になんと思われようが、チームのメンバーは自分が盾になって守り抜く。その意図をメンバーが理解しているとしたら、マルセロのコメントのように、リーダーのためにも頑張ろうという気持ちに繋がることでしょう。

「言葉のちから」で士気を高める

私の力は誰よりも私自身が信じている。来シーズン、我々は優勝する。間違いなくね。(FCポルト監督就任会見)

我々チェルシーには最高の選手たちがいる。そして今、傲慢に聞こえたら許して欲しいが、最高の監督を手に入れた。
私はヨーロッパチャンピオンである。私は特別な存在(Special One)だ。(チェルシー監督就任記者会見)

いずれのコメントも、結果を出せなければただの大言壮語になってしまいます。自分の仕事に自信を持っているからこそ言えるのでしょうが、自分で追い込んで退路を断つ覚悟が感じられます。

彼が監督になった時の記者会見が忘れられません。
「我々は間違いなく優勝する」そう断言したのです。
普通なら「優勝するために頑張る」でしょう。しかし彼は普通ではなかった。
あの言葉で私たちもすっかりその気になってしまいました。

ポルトの監督就任時の中心選手、元ポルトガル代表のヴィトール・バイア(2002~2004年にモウリーニョのもとでプレー)はこのようにコメントしています。

新しい監督が自信を持ってこういう言葉を発すれば、選手の士気は高まるでしょう。

ただ、結果が出なかった場合、その揺り返しは大きくなりますから、「必ず結果を出す」という強い意思の元に確実に結果を出すことが求められます。

成功するための強い意思を持つ

意思の力の大切さについては、2011年イスラエル国王杯決勝前のロッカールームで、

電気より電子力より強い動力がある。
「意思」の力だ。

と、アインシュタインの言葉を引用してコメントしています。

選手へ意思の力の大切さを説いているのですが、なによりもモウリーニョ自身が、目標を成し遂げるため、あらゆることに強い意思で望んでいることが感じられます。

プロフェッショナルな姿勢を貫く

モウリーニョが9歳か10歳のクリスマスの日、家族で食事を楽しんでいると電話がなりました。それは、サッカークラブの監督をしていた父親の解任を告げる電話だったそうです。

この出来事により「私はサッカーの世界がどういうものかを知った」と発言しています。
試合後のインタビューでは、記者とこんなやりとりがありました。

君は自分が世界一のジャーナリストだと思うかね?
(記者)そうは思いません。
そう?じゃあ君とは仕事できないな。そっちの君はどうだ?
これは私の人生哲学だ。
この競争の激しい世界で生きるなら自分は誰にも負けないと信じるべきだ。
どんな強大な相手でも恐れてはいけない。
リスクを怖がってはいけない。
私が建築家なら、どんなひどい評価を受けるものを作っても自分だけは信じられないような傑作を作ったと思うだろう。
これが競争社会で生きるプロフェッショナルの持つべき哲学だ。

自分の仕事に全力で取り組み、世界一の仕事をしているという自負を持ち、全ての責任を負うのがプロフェッショナルであると。

レアル名誉会長のディ・ステファノが2011年に1–1で引き分けたホームサンチャゴ・ベルナベウでのバルセロナ戦を受けて「レアル・マドリードはまるでライオンを前にしたネズミのようだった」とコメントしたことに対しては、

私は名誉会長のように偉くはない。ひとりの監督にすぎない。
だがチームのことを決めるのは監督。つまり私だけだ。

「自分の仕事」の範疇に対しては、相手が誰であっても干渉させず、自らが全責任を負うと。うーん…痺れる…

確か一時間の番組だったと思うのですが、それだけでこの濃さですからねぇ。良い番組でした。

モウリーニョvsグアルディオラ―最強集団をつくるリーダーの条件

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フアン・カルロス クベイロ,レオノール ガジャルド ベースボールマガジン社 2011–11

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モウリーニョの流儀

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片野道郎 河出書房新社 2009–09–03

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モウリーニョの哲学

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