人気レストラン「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」創業者 坂本孝氏が「俺の…」を創業してから、現在の繁盛店にするまでをまとめた本です。
どのようにして、人気店「俺の…」は作られたのか。ポイントは「疑うこと」と「信じること」です。
異業種から参入してきた企業が「業界の常識」にとらわれず、革新的な業態を生み出すことがあります。
QBハウスの創業者 小西国義さんは大学卒業後、入社した昭和電工を退して、医療機器商社の経営をしていたそうです。(QB・創業者にインタビューより)
商社の仕事で全国の理容店を利用するなかで、
なぜ、理容店は決まりきったメニューなのか?
なぜ、長時間拘束されなければならないのか?
などの疑問を抱き、それがQBハウス創業のきっかけになりました。
本書の著者 坂本孝氏は「俺の…」の前に「ブックオフ」を創業しています。
ブックオフは「古書店は目利きが必要な商売。これは、マーケットのニーズではなく趣味の世界ではないか?」という疑問から始まりました。
業界の常識を疑った結果、
という、新しい古書店のビジネスモデルが生まれたわけです。
「俺の…」は、まず「一流の料理人が、一流の料理をつくり、かつてないおいしさをリーズナブルな価格で提供する」というコンセプトがありました。
飲食店は一般的に原価率30%以内に収めて、その中でいかに美味しい料理を提供するかが常識だと言われます。
坂本社長は原価率30%以内という常識を疑います。
良質な食材を使い、倍近い原価率にしたとして、本当に商売にならないのか?
試算の結果、客の回転率を高めれば可能ということがわかり、回転率を高めるためには立食だ。ということで、立食のイタリアン・フレンチのレストランという異色のスタイルが生まれました。
両方に共通しているのは「業界の常識」を疑うことです。
素人目線で感じた疑問に着目し、解決策を考えぬく。これにより、新しいビジネスモデルを構築しているんですね。
すでに書いた通り「一流の料理人が、一流の料理をつくり、かつてないおいしさをリーズナブルな価格で提供する」これが「俺の…」のコンセプトです。
このコンセプトを見た時、最も難しいのは「一流の料理人が」の部分だと思いました。
一流の店で客単価3万円の高級料理を作っていた料理人を、いかにして立ち飲みで客単価3千円の店へスカウトするのか。普通の感覚では格落ちにも見えます。
本書の中にも採用面接の際、どういう店かを説明した瞬間、料理人の表情が急変したとあります。
そのとき、どのようにして一流の料理人を口説いたのか?…については、ぜひ、本書を読んでみてください。
では、なぜ一流の料理人が入社を決断したのか?
持ち株や高水準な報酬?
それも理由の一つではあるでしょう。
しかし、最大の理由は料理人を信じて大きな裁量を与えたことではないでしょうか。
料理人には仕入れ交渉をさせないのが、業界の常識だそうです。
料理人が業者と癒着して、不公正な仕入れをする可能性があるというのが、その理由。性悪説ですね。
それに対して坂本社長は、あくまでも性善説を取りたいと言います。
各店舗のシェフが現金100万円を懐に入れて毎朝築地へ行って、「あれちょうだい」「これちょうだい」「それ全部ちょうだい」と言えるような会社になりたいのです。私は、これまでの飲食店の常識にある性悪説の防波堤になって行きたい。
原価率30%以内、メニューや価格を自由に決められない、食材の仕入れに関与できないなど、一般的なレストランの常識を壊し、料理人を信頼して任せる。
料理人は仕事へのやりがいを感じ、さらに良い店にしようと努力する。その結果、店はますます繁盛する。好循環が生まれます。
坂本社長は稲盛和夫氏が主催する盛和塾の塾生とのことですが、稲盛氏の教えの中でも特に「利他の心」を大切にしているそうです。
「利他の心」とは、人のために何かをやって、人も喜び自分も喜ぶこと。これが人生の中で最も尊いと思った時に不思議と会社が伸びていくと言います。
**業界の常識は疑うが、社員は信じて大切にする。**これが、「俺の…」が成功した大きなポイントではないでしょうか。
この他にも、競争優位性をどのように作るのか、なぜ銀座8丁目に集中出店するのか、従業員のインタビュー、稲盛和夫氏の教えなど興味深い内容が多々あります。
読み応えがある一冊でした。
俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方
posted with ヨメレバ
坂本 孝 商業界 2013–04–03
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