学生時代、家呑みのつまみを作り始めてから、料理をつくるのが好きになりました。今でも週末は料理をつくることが多く、このブログでもいくつか料理記事を書いてますが、どれもレシピ的な書き方にはしていません。
これは、檀一雄の『檀流クッキング』という本を読み、レシピでなくてもいいのだと思っているからです。
『檀流クッキング』は昭和40年台、檀一雄が産経新聞に連載していた料理コラムをまとめた本。
さまざまな国の料理を92種類紹介していますが、細かな手順や食材の分量などはザクッと割愛しています。レシピ本ではないのです。
どんな食材と調味料を使うのかと、ポイントとなる手順は何かのみを提示し、あとは好みでやってみればよろしいというスタンス。
例えば、オカラを使った「大正コロッケ」には、こんな説明があります。
そのトビウオなり、アジなり、イシモチなりの肉を包丁でこそぎとり、スリ鉢で、よくつきほぐす。魚肉のスリ身ができるわけである。その魚肉のスリ身の中に五円分のオカラを入れる。よく混ぜあわせ、ネギのザク切りと、乾したサクラエビを適当に混ぜあわせれば、それで良い。
なんというワイルドさ。「The 男の料理」です。
とは言え、ある程度、料理ができる人なら、これぐらいの説明でも作れるんじゃないでしょうか。現に『檀流クッキング』の全レシピを再現されている方もいらっしゃいます。
趣味で料理を楽しんでいる私のようなタイプは、詳細で複雑なレシピだと、逆に作ってみようという意欲が低下してしまうので、これぐらいの塩梅で、さまざまなジャンルの料理を紹介してくれるほうがありがたいんですよね。
食を題材とした本やコミックが好きなんですが、それも同じ理由です。
料理を作らない人でも、四季の旬の食材を使った料理であったり、昭和40年台の食材事情がかいま見えたり、「こんな時期には、よく、その太宰治と二人、荻窪の屋台のウナギ屋へ出かけていったものだ」などという記述もあったりして、食を軸としたエッセイとして楽しめるのではないかと。
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