10歳で大学に入学し、14歳の現在、量子物理学の博士課程に在学するジェイコブ・バーネットの母クリスティンの自伝『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』を、何度も涙腺を決壊させながら読みました。
アインシュタインのIQをも超えていると言われるジェイコブですが、2歳のとき中度から重度の自閉症と診断されたそうです。
医師からジェイコブは一生会話をしたり、文を読んだりすることができない可能性が高く、靴紐を結ぶなどといった基本的な日常の活動を一人で行えるようにはならないだろうと。
しかし、クリスティンは専門家の意見を鵜呑みにせず、母として直感を信じて独力で育てようと決心。
自らも脳卒中になったり、夫の失業などもあって経済的にも困窮し、時には絶望しそうになりつつも、我が子を良く観察して何が必要なのかを考え、可能な限りのものを与えてサポートし続けます。
やがて自閉症の症状は少しずつ改善し、強く興味を持っている分野に優れた能力があることがわかり、「興味のあることをとことんやらせる」という方針に従った結果、「読み書きできない」とまで言われていたジェイコブは10歳で大学の入学試験に合格します。
子供を信じて何があっても負けない母クリスティンの愛と勇気。もし、クリスティンの子として産まれていなければ、ジェイコブの才能は一生、日の目を見なかったかもしれません。
なぜみんな、この子たちができないことにばかり焦点を当てるのだろう? なぜできることにもっと注目しないのだろう?
クリスティンの言葉です。
わかっていても自分のこととなると、どうしても「できないこと」に焦点をあててしまいがちです。クリスティンは「そう考えるのが良いようだ」ではなく、それを信念にしているからこそ貫けたのでしょう。
子育てにかぎらず「人」を育てるという意味で、学ぶところが多いとても感動的な本でした。