TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる
Chapter 1 「メモのとり方」を知れば、大作が自然に書ける
計画がなければ、手当たり次第にやるしかない、という考え方は大きな誤解です。洞察や新たなアイデアを生み出すためにできるようなワークフローをまず構築することに、鍵があります。
ツェッテルカステンを利用している例が少ない理由
- ツェッテルカステン自体に注目し、それが組み込まれたワークフローを含めた全体像を理解しようとした人が少なかった
- 刊行物がドイツ版しかなく、さらに社会学者コミュニティ内に閉じていた
- シンプルな手法のため期待値が大きくなかった
Chapter 2 メモはとればとるほど、財産になる
理解のためには見たまま聞いたままではなく、自分の言葉に直して書き留める必要がある
走り書きメモ
- 頭に浮かぶあらゆるアイデアを書き留める
- 一ヶ所にまとめること
文献メモ
- 何かを読むたびにとるメモ
- 出典とメモ(内容・忘れたくないこと・自分が考えたこと・引用など)を残すことが主旨
- 厳選し短く自分の言葉で
- メモは書き直すことが前提
- 走り書きメモ、文献メモをひととおり見て内容を整理する
- アイデア・主張・議論・情報を収集するのではなく発展することが目的
- 1つのメモは1つのアイデアのみ書く
- 主語・述語を明確に
- 出典を明記する
- 書き直し後、
- 走り書きメモは捨てる
- 文献メモは文献管理システムへ入れる
- 書き直したメモはメインのツェッテルカステンボックスへ入れる
永久保存版メモ
- 関連するメモがある場合リンクを設定する
- あとで探せるように索引を作る
- トピックを求めてブレインストーミングするのではなく、ツェッテルカステンの中を見て、メモの連鎖やアイデアの塊を見つける
- 文章のテーマが決まったら、関連するメモを集めてアウトライナーに並べて俯瞰する。欠けている要素、冗長な要素を探す
私たちの学びの大半は、偶然の出会いから生まれる
Chapter 3 必要なのはシンプルに「ペン」と「紙」
ツェッテルカステンに必要な道具
- 書くものと書かれるもの(紙とペン)
- 走り書きのメモを書くため
- 文献管理システム(Zoteroなど)
- ISBNやDOIを入力し書誌情報を取得する
- ツェッテルカステン
- 紙でやるなら入れる箱
- Obsidianならフォルダ
- エディター
- 書誌情報の入力のため
論文や書籍など厳密な書誌情報を必要する場合を除き、1と3があれば十分であろう=Obsidianだけで十分
Chapter 4 「メモ」はあなたオリジナルの「思考」を生む魔法のツール
- ツェッテルカステンのようなツールを導入する場合、全体のワークフローと各ステップの意味を理解する必要がある。形だけ真似ても効果を発揮できない
Chapter 5 メモをとれば、書くことではなく思考に集中できる
- アウトプットにフォーカスする。書くことが目的ではない。アウトプットが全てである
- アウトプットの質を高めるために必要なこと、不要なことの見極めが大切
- ツェッテルカステンは自分の言葉で説明することを重視するため、対象の理解が不可欠
Chapter 6 メモをとるときは、つながりを意識する
- 本当に優れたアイデアはきわめてシンプルである。そのため、最初は見逃されてしまう。
- 輸送用コンテナの発明(『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった』)
- ツェッテルカステンではメモを「どんな文脈で見つけたいか」を考える
- 永久保存版のメモは、それだけで完結し、いつでも理解可能な文章で書く
- 永久保存版の「重要なメモ」と走り書き用の「重要でないメモ」を明確に分けること
- プロジェクトメモをつくる場合など、ボックス分けしすぎに注意
- プロジェクトが完了した場合に目に触れにくくなるし、優れたアイデアであればプロジェクトに閉じず、さらに大きなアイデアへ熟成できるはず
- 走り書きメモであふれさせないこと。定期的に処理する(永久保存メモへの昇格、廃棄)一日か二日以内が望ましい
- 内容が理解できなくなる
- 中身を忘れてしまった
- 平凡に感じる
- 文脈を忘れてしまった
- 内容が理解できなくなる
- 本へ読書メモを書く、下線を引くなどはムダ。考え方としては、これも走り書きメモであり、処理(自分の言葉でメモ化する)が必要
- 文献管理用メモをしまう前に、内容を読み返して自分の思考の流れと関連性を検討し、永久保存版のメモを作成する
- 「プロジェクトには専用のフォルダーをつくっていい」とあるが、そのプロジェクトの検討、作業をしている際にアイデアを思いつく可能性があり、それを完了後にアーカイブする専用フォルダーへ入れっぱなしにして死蔵させない仕組みが必要そう
Chapter 7 メモをとれば、オリジナルのテーマと資料が自然に揃う
- 最初に主題を選ぶべきというのは間違っている
- ハンス・ゲオルグ・ガダマー「解釈学的循環」
- あらゆる知的な試みは、もともともっていた先入観に基づき始まる。
- 研究を重ねることで修正され、さらなる的な試みの起点となり、またそれに対する研究を行う…という循環
- ハンス・ゲオルグ・ガダマー「解釈学的循環」
- 関心のある内容に集中し書き留める。その過程で、他の関心が浮かび上がったら、それに集中する。その循環で価値のあるテーマが浮かび上がってくる
適切なメモのとり方が教えられることはめったにないため、ほとんどの文章術の本が、テーマを見つけるためにブレーンストーミングから始めるのは無理もありません
- 興味を惹かなかった理由もメモに残しておくことで、後日、価値のある洞察に変えられるかもしれない
Chapter 8 メモがあれば、大作も書ける
- 自分の考えを文章で表現すると、本当に考え抜いたかどうかがわかる
- 新しいメモをこれまでのメモと結びつけようとした瞬間、矛盾や不整合が明らかになる
Chapter 9 メモをとることは、「考え」「覚える」教養にもなる
- 集中力を維持できる時間は限られているが、ツェッテルカステンは短いメモの集合のため、集中と切り替えがやりやすいメリットがある
- 「書く」と「校正」は人格を切り替える。書く時には自分の中の批評家が出ないように、校正する時には作者の思考を廃し書かれている内容に集中する
- 「複雑な状況における意思決定は、長い論理的分析があって生まれるのではなく、直感で行われます」 (Gigerenzer, 2008a, 2008b)
- 直感とは経験の蓄積から生み出させるもの
- 理解していないことは思い出せない。メモをとるプロセスの中では常に問うことが重要。問うことで思考が促され理解も深まる
- 完了していないタスクは、完了するまで短期記憶を占有する傾向があるが、あとで実施するための仕組みを持ち、脳がそれを確信すれば未完了
- 思考プロセス(過程)もメモに残すことにより、中断したところから再開する際もスムーズ
- 何を調べ、どのように考えて、どのように結論付けたか、新たに発生した問いなど、すべて書く
Chapter 10 読書メモは、自分の言葉で書こう
読むときはペンを手に持って、普遍的と思えることや、有用になりそうなことの短い手がかりを小さなノートに書き込むことをすすめたい。 これが、脳裏に焼き付ける最善の方法だからである。 - ベンジャミンフランクリン
- 自分自身の言葉に翻訳してまとめることが重要。コピペでは定着しない
- 文献メモは文献によって記述粒度が異なっても良い。
- 作成する目的は文献の内容を理解することなので、難しい文献であれば詳しく、簡単な文献であればキーワードをメモするので十分
私はいつも手元に紙を用意し、そこに読んだ本の何ページかのアイデアをメモする。裏面には書誌情報を書く。読み終わったら、メモをひととおり確認して、すでにツェテルカステンに入っているメモとどう関連しうるかを考える。つまり、ツェテルカステンとどう関連するかを常に念頭に置いて読むと言うことだ。 - Luhmann et al., 1987
- 読書の際、言及されていることと同じぐらい言及されていないことも熟考する
- 文献メモの目的は「ツェッテルカステンへ有用なメモを蓄積すること」と考えて、どのように読み、何を書くかを吟味する
- 「手書き」は遅いことがメリット。それにより、聞く内容、書く内容を吟味せざるをえず理解が深まる
- 確証バイアスに注意
- 既に自分がわかっていると思っていることを裏付けてくれる、気分が良くなる説に自然と惹かれる
- ある仮説を採用すると決めたその瞬間から、脳が仮説を裏付けるデータを求めて周囲を検索してしまうことを確証バイアスと言う
- ツェッテルカステンでは、以下点で有利
- 各プロセスが通常のものとことなる(題材にする仮説やテーマの決定から始めない)
- 自説を裏付ける事実を探すのではなく、関連情報を主張を問わずに収集できる
- 事実と情報の保管は、ツェッテルカステン引き受けてくれるので、思考と理解に集中すべき
Chapter 11 メモをとることは最高に学ぶことでもある
- 引用を収集することを目的にしてはならない。趣旨を短い説明で、自分の言葉で書き留めることが大事
- それらのアイディアを処理すること、つまり別の文脈にある他のアイディアとどのようなつながりを持つかを考え、明示されていない問いを導出し、深く考察する
- ファインマンのノートは思考の過程を全て書き出して、思考プロセスそのものを落とし込んでいた
- 本の内容をただ書き写すだけではなく、得られた問いに対する自分の考えを思考の流れに沿って描くのがメモである
- 問いを書き出して可能性のあるつながりを書器、明らかにするだけでも概念や理論を調べていることになる。それらの見解がある問題に対する観点として浮かび上がる
- メモをツェッテルカステンへ追加する際、他のメモとリンク関係を整理する。無ければ1番最後に加える
Chapter 12 メモ同士をつなげれば、次から次へアイデアが発展していく
- ツェッテルカステンを百科事典にすることが目的ではない。網羅性に欠けている部分を発見したからと言って、すぐに新しいメモを書き起こす必要は無い。自分の思考に役立つ時にだけ書けば良い
- ツェッテルカステンは思考のための道具であり、それ自体の完成度を求めるのは間違っている
- 索引のためのキーワードは、このメモを表すのに何が最もふさわしいかではなく、内容を忘れたとしても、このメモをもう一度見つけたいと思うのは、どんな状況かを考えて設定する
- ルーマンの研究の特徴は、社会の中の全く異なる要素の中に同じ構造を発見することだったのは偶然ではない
Chapter 13 メモをとればアウトプットができる
- 推敲の際、内容との関係が疑わしい節を削除するのは、心理的な負荷が高いので、削除した内容を保存するファイルを作っておくなどして、いつでも復活できるようにしておくと良い
- Gitで文書を管理するなど、最初からシステムを構築しておくのが良さそうだ
Chapter 14 何かをひらめくたびにペンをとろう
- 何かを読むたびに最も重要な事項や、興味を惹かれたことを書き留める習慣をつくる